さへずり草紙NEO

旧はてなダイアリーを引き継いでいます。

2004-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「奥様の布教」白金台中学校二年 窓野雪夫

学校の放課後に四谷の病院で診て貰つた帰り、すれ違つた他校の生徒に後ろから 「雪夫さんぢやあないですか」 と声を掛けられました。振り返へると、黒い制服に制帽のこましゃくれた少年が僕を睨みつけてゐたので、僕は(誰だつたらう?)と思ひながら少年に…

追はれるやうに書く一日中

「奥様の失望」白金台中学校二年 窓野雪夫

襲ふやうにやつてきた冬の寒さが幾日も続いた先週の末、遂に朝起きるとお屋敷の外が白銀の雪に覆はれてゐました。僕はカーテンを開けて飛び込んできた一面の白い世界に目をパチパチさせて思はずホゥと叫んでしまひました。ファサード屋根からこぼれ落ちた粉…

「文化祭の思ひ出」白金台中学校二年生 窓野雪夫

僕の学校では毎年、文化祭の季節になると全校挙げて大きな張りぼてを拵へる慣はしがあります。さうして文化祭の日に各学年のクラスで部品を持ち寄つて、組み立てるところに友愛精神が生まれるのであります。 今年も文化祭に向けて、何かよく分からない大きな…

科學冒險讀物 「遙かなるボルチオ探險⑦」

其れから二、三日の間といふもの泥濘を往きつ戻りつ、曖昧模糊の中を手探りで歩き続けて疲労困憊してゐた或る夕暮れ、突然真つ暗な森を抜けたかと思ふと眼の前一面、輝くばかりの金色の光芒に包まれた。 其の光の只中に、ジャングルの奥地には似つかはしくな…

「運動会と奥様」白金台中学校二年 窓野雪夫

腎虚も漸く軽くなつたので、秋から僕は再び学校に出るやうになりました。丁度、運動会があるので、「運動不足でせうから」と先生の仰るまゝ、マラソンと大玉ころがしと騎馬戦に出ることになりました。 運動会の始まる一週間前になると、大きなトラツクが何台…

10000ヒット記念

「奥様の優しさ」窓野雪夫

ずつと休学してゐる間、奥様は僕にトテモ気を遣つてくださつたので、いつも有難くて涙がこぼれさうでした。僕は五日に一遍、お医者に通つて、それ以外は部屋で短波ラヂオを組立てたり、奥様が勝手に室に置ゐてゆかれる「犯罪科学」や「奥の奥」をぺらぺらと…

明日のコンサートを控え。