2006-01-01から1年間の記事一覧
カゲロマは蹌踉とした足どりだった。玩具の弓矢で獲った鶉を提げたイネルが、ちょこちょことカゲロマの後にくっついていた。 「ちゃん」 イネルの声は心配そうである。カゲロマは億劫そうに誰に答えるでもなく呟いた。 「色里で女を抱きすぎたわい。もはや萎…
カゲロマは意味もなく怒り狂っていた。一族の熱い血潮がそうさせるのであろう。 わななきながら「ちゃん」と小さく呼ぶイネルの眼前にひろがる草原を、カゲロマはタッ、タッ、タッタッタッと一気に走り抜け、草叢から驚いて飛び上がる兎や猫、ひばり、ショウ…
カゲロマは眉をしかめて唸っている。 カゲロマは眠っている。眠りながら苦悶している。 「カゲロマよ、カゲロマよ。お前はいつまでも放浪の旅を続けて、虚しくはないか、仕官の道を選んでひとところに落ち着くつもりはないか。其処でイネルと平和な家庭を築…
「して、カゲマロ殿には彼奴ら殿のお命を狙う不逞漢どもから殿をお守り頂きたいのじゃ」 流浪の浪人、自らの定めはおろか、秘められた能力にすら無頓着な謎の浪人はカゲロマという。 生まれ落ちた時からの放浪人生、流れ流れる流木が岸に触れるように身を寄…
「怪しき浪人」 風が枯れ木をかすめてヒューヒューと鳴る。見わたす限りひょろ痩せた枯れ木がちらほらとあるばかりの荒野を、髪を束ねもせず不精に伸ばした浪人風情と、年端のいかぬ子供が往く。 頭を稚児剃りにした子供は浪人の着流しの裾をつかんで、おぼ…
テレビのしょぼい料理番組で知りましたが、 加計呂麻島 という島があるんですね。奄美大島。 カゲロマ島と聞いて、たちまち頭の中に「髑髏城」とか「まぼろし城」とか怪しい妖術使いの老人とか、白土三平の漫画チックな妄想が乱れ飛びました。カゲロマは遠く…
さし【刺し】挿すこと さし【尺】①ものさしを挿すこと。②口に挿すこと。 ざじ【ザジ】 「地下鉄の〜」御堂筋線梅田〜淀屋橋間のように地下鉄のよく揺れる区間で小悪魔のような少女に挿すさまを描いたヌーヴェルバーグ映画。全体が振動しているため、正確な発…
腎虚で大人しく寝てゐたら、とてもいやらしい夢を見てしまひました。其れは、奥様と上海旅行をした折に見た抜群に肢体の美しい踊り子マヌエラとそれはそれはいゝ事をする夢で、僕は夢の中でツイ勃起して仕舞ひました。 マヌエラと合体して腰を猛烈に動かして…
何ヶ月か休学する内にお腹の具合も元に戻つたので、僕は久しぶりに学校に通ふやうになりました。いつものやうに教科の予習を自室でしてゐましたら、下の階から奥様が 「雪夫さん、雪夫さん」 と呼ばはりました。僕は背筋がぞくつとして本当は行きたくはなか…
いつも奥様が僕の陰茎を弄ばれて何度も射精させられますので、この二週間ほど下腹がしくしく痛むと思ひましたら、遂に昨日の軍事教練でトーチカに飛び込む途中、フラフラと倒れて仕舞ひました。配属将校の先生にうんと叱られながら担架で医務室に運ばれまし…